家賃を払い続けるか自社不動産を購入するか、どちらが正解? NO.0054

皆さんこんにちは。

暑い日々が続く沖縄ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

我々の業界は、6月から年末にかけて比較的ゆったりした時期(逆に12月~5月が忙しい時期となります)になるのですが、経営者としては、こういった時期こそ未来の収穫を得るための準備期間として非常に大事だと考えています。取り組んでいきたい事項は常に複数ある状態ですが、緊急度と重要度を意識しつつ、優先順位をしっかり付けてタイムスケジューリングしていきたいと思います。

さて、本日は、お客様から比較的相談の多い事柄であり、かつ、判断を誤ると会社を破産に追い込む可能性がある、非常に重要な内容について記載していきたいと思います。

皆様の会社でも検討事項として挙がる可能性のある内容だと思いますので、最後まで読んでいただけると幸いです。

 

1.自社不動産の購入はキャッシュフローを大いに圧迫

ある程度の会計管理をきちんと行っている会社様であれば、年度後半になってくると大方の利益予測がつくと思いますが、利益が出ているからと、B/Sを精査せずに自社で不動産を購入して大失敗する事例が多く見受けられます。前回までのコラムでも述べましたが、P/Lはあくまで一年単位で区切られる損益計算であり、資金繰りを考慮する場合には、今までの経営の蓄積であるB/Sを精査して判断することが大事になります。

不動産を購入するという判断には、『家賃を払い続けるより、購入のための借入金を返済すれば、やがて自分のものになるからいい』という勘違いが潜んでいます。ここでは、なぜこの勘違いが生まれるのか、そして、どう考えるのが正解なのかを見ていきましょう。

 

先ほども述べましたが、順調に利益が伸びていると「利益が出ているから、買える不動産は買っておこう。購入費用が経費になるから、会社で借りている事務所やヤード、駐車場なども毎月賃料を払うよりは買ったほうがいい。ゆくゆくは借入金の返済が終われば、自社の資産となるのだから」と考える社長さんが多くいらっしゃいます。また、仮に利益が出ていなくても、「ずっと家賃を払い続けても自分のものにはならないから購入したい」とか、「経営者として一国一城の主になりたい」といった思いが出てきたりもします。

これらは全てキャッシュフローを意識した経営、長く安定して経営を行っていける会社づくりを考える場合には誤った考えとなります。

 

実は、不動産購入による経費は、社長が思っているほど大きな額にはなりません。例えば、不動産購入にかかる経費でメインになってくるのは建物の減価償却費ですが、定額法による長期間の償却となるので実はたいした経費にはならず、最も支出額の大きな土地の購入代はそもそも減価償却ができません。駐車場の場合も、土地の上の舗装費用は減価償却ができますが、土地部分はやはり減価償却ができないので、計上できる経費は少なくなります。土地のみの購入の場合には、固定資産税と銀行借入の金利のみが経費計上できます。また、最も支出額の大きな借入金の元本返済部分も経費にはなりません。借りてきた時に収益として計上しないのですから、返済時に経費計上できないのは当然のお話です。

 

多くの社長さんが勘違いされているのは、賃借しているものを購入しても家賃と同じくらいの借入金返済額にすればお金は回るし、やがて借入金返済が終了すれば自社の資産として残るから、そのほうが長い目で見たら得だと考えていることです。不動産購入後は家賃や地代の経費が無くなるため、P/Lの利益は増えていくことになるので、一見、問題は無いように見えます。にもかかわらず、不動産を購入した結果、「利益は出ているが、資金繰りが苦しい」という会社様が多くおられます。いったい、何がまずかったのでしょうか・・・?

 

2.不動産購入により、P/L上の収支と実際のキャッシュフローは大きく乖離する

実は、P/Lの利益は表面上の利益とでもいうべきものであって、外に出ていくキャッシュが不動産購入によって大きく膨らんでいたものを反映してこないのです。こちらについてはB/Sを見ないと分かりません。ここでは、年間800万円の地代・家賃を支払っていた不動産を1億2000万円で購入したケースを見ていきましょう。

 

家賃・地代の支払いが無くなったため800万の経費が減り、これはそのままP/Lに反映されます。また、不動産投資は一般的には金融機関からの長期借入金で賄いますから、1億2000万円の長期借入金という負債が増えます。不動産のような固定資産の増加と長期借入金の増加はB/Sに記載されるものであり、P/Lには反映されません。もちろん、借入金の元本返済部分もB/Sにある科目の減少ですから、P/Lには反映されないのです。

 

P/Lだけを見ると、800万円の地代家賃分が無くなり、減価償却費、固定資産税、借入の支払利息などで600万円ほどの経費が新たに発生するとした場合、経費は差引200万円減ります。その分、同額の経常利益は増えてくるので、法人税率を35%とすると、税金コストが70万円ほど余分にかかります。P/Lだけを見ると、税引後当期純利益が差引130万円増えるので、不動産購入前に比べて業績は向上したように見えます。しかし、外に出ていくキャッシュは、不動産購入前と比べて借入金元本返済分と追加で発生する納税を加えると、逆に420万円くらい増えてきてしまうのです。そして、これが、5年、10年と年数を重ねるに連れて、5倍、10倍のキャッシュフローの差となって現れてきます。10年でざっくり4200万円と考えると、いかに大きな差となって現れるかが分かると思います。

 

※仮に不動産購入前のキャッシュアウトがトータル6,000万円(年間)だとした場合

(不動産購入後のキャッシュアウトのトータル)

6,000万円▲800万円(地代家賃)+180万円(借入利息 ※年利1.5%と仮定)+固定資産税168万円(年1.4%)+800万円(借入金元本返済分 ※15年返済と仮定)+法人税納税増加分70万円(前述)=6418万円

 

つまり、P/Lで表面上の利益が増えた一方で、資金繰りは苦しくなっていくのです。自己資本とキャッシュが高レベルで充実している会社様であれば話は別ですが、不動産購入資金を借入金で賄う前提である以上は、購入額が大きくなればなるほど、資金繰りも比例して苦しさが増していきます。こうして、段々と約定通りの借入返済ができなくなっていき、やがては借入返済のための借金をするはめになっていきます。その借金が積み重なり、毎月の返済額がますます膨大になり、そのうち銀行は追加融資に慎重になっていきます。これが黒字倒産を引き起こす典型的な悪循環です。

 

3.まとめ

最後に、本日のまとめを記載していきましょう。

まずは、不動産投資の失敗により、多くの中小企業が倒産の憂き目にあっている事実を認識することが大事です。一旦購入してしまうと、多くの場合は撤退ができないために、ずるずると赤字を垂れ流すことになります。気が付いた時にはどうしようもなく安い金額で売却して撤退することになります。賃借なら、スクラップアンドビルドで会社の成長に合わせて次々に条件の良い場所に移転できます。

次に、大きなキャッシュアウトを伴う経営判断を行う場合は、P/Lベースではなく、B/Sベースで判断を行うことが大事であることを認識することです。毎年のP/Lベースでの利益の積み上げが結果的にはB/Sを良くしていくことに繋がるので、もちろんP/Lも大事ではあるのですが、長期的スパンで経営を考える場合には、常にB/Sを俯瞰して判断を行っていくことが長く安定的に経営を続けていくことの要諦となります。

数字は「見る」のではなく、「読む」ことが大事です。

皆様の事業の発展、永続を願っています。

前のページへ戻る

 

最新記事

Contact

お問い合わせ

名称 藤原亮税理士事務所
住所 〒901-2126
沖縄県浦添市宮城1-26-8 平安ビル201号
営業時間 月〜金 9:00~18:00(土日祝を除く)